カスハラ対策 義務対応チェック > コールセンター・電話窓口
コールセンターのカスハラ対策、電話を切る基準と転送の順番の見本
同じ要求が続く電話は、十分に説明したあとなら、決めた時間で切る手順にできます。厚生労働省のカスハラ対策の指針が、対処の例として「十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって(略)電話を切ること」を挙げています(第4項⑴ロ)。迷うのは「何分で」「誰の判断で」の2点なので、窓口で先に決めて席に貼っておきます。法律でサービスを提供する義務がある窓口や、障害のある方からの配慮の申出は、この手順とは別に扱います(指針 第4項 柱書)。
従業員を雇う会社には、2026年10月からカスハラ対策が義務になりました。指針は、電話での言動もカスハラに含むとしています(第2項⑴)。このページは、指針と厚生労働省の企業マニュアルの電話の箇所を原文で確かめ、数人から数十人の電話窓口で使える形にしたものです。
公開日・更新日: 2026年11月7日 / 2026年11月6日にカスハラ対策の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)と、カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)の本文で確認
うちの窓口に足りないものを確認する(無料・約2分)今日やること: 席に貼る5行
- 応じられない要求には、理由を説明して「その件はお受けできません」とはっきり伝える。
- 説明しても同じ要求が〔30分〕続いたら、「このままですと、お電話を終了します」と1回予告し、それでも続けば「これ以上はお答えできません。お電話を終了します」と伝えて切る。切ったら〔SV〕に一言伝える。
- 性的な発言は、すぐ〔SV〕に転送する。性的な電話が同じ日に同じ相手から2回目以降なら、転送せず自分の判断で切ってよい。
- 怒鳴り声が続くときは、ヘッドセットを外してよい(外している間も2の時間は数え続ける)。〔SV〕と話すときは、必ず保留にしてから。
- 「殺す」「そっちに行く」などと脅されたら、時間を待たずに〔SV〕に知らせる。〔SV〕が警察に通報する。
どの行も、厚生労働省の指針と企業マニュアルに書かれた対処の例がもとです。〔30分〕と2の予告は窓口で決めて書き換えます。
5行の根拠(指針・企業マニュアルの該当箇所)
1と2は指針の対処の例(十分に説明しても要求が続けば一定の時間で電話を切る)と、企業マニュアルの対応例(対応できない理由を説明し、応じられないことをはっきり伝えたあと、膠着してから一定時間(30分程度)を超えたら電話を切る)をもとにしています。マニュアルは、30分は一例で、時間は業種・業態を踏まえて会社ごとに決めるべきだとしています(企業マニュアル P.29〜30)。〔30分〕は窓口で決めて書き換えます。
3と4は、企業マニュアルが紹介している裁判例の会社の手順です。その会社のコールセンターは、わいせつな電話は指示を待たずにスーパーバイザーへ転送する、同じ日の同じ相手からの2回目以降は担当者の判断ですぐ切ってよい、大声のときはヘッドセットを外したり転送したりしてよい、という手順を作って周知していました。マニュアルは、この会社が顧客トラブルへの対応を十分に行っていたとして賠償責任が認められなかった例として紹介しています(企業マニュアル P.16〜17、裁判例②)。保留にしてから相談するのは、社内の相談が相手に漏れないようにするためです(同 P.27)。5は、身の危険を感じたら定めた時間に達していなくても警察へ通報や連絡をする、というマニュアルの注意(P.30)と、犯罪に当たり得る言動は警察へという指針の例(第4項⑴ロ)によります。
〔SV〕を置いていない数人の窓口なら、〔SV〕の欄には責任者の名前を書きます。責任者が席にいない時間帯は誰に回すかも、同じ紙に書いておきます。
うちの窓口に足りないものを確認する(無料・約2分)切る前に決めておくこと: 何分で、誰の判断で
指針もマニュアルも、何分で切るかを決めていません。決めるのは会社です。ただ「30分たったら切ってよい」とだけ書くと、オペレーターは「本当に切ってよいのか」と迷って切れません。紙には次の3つを書いておくと迷いが減ります。
- 数え始め: 応じられないことをはっきり伝えた時刻から数える(マニュアルの「膠着状態に至ってから」)。電話を取った時刻からではない。
- 切る人: 時間が来たらオペレーターが切ってよいのか、〔SV〕に確認してからか。確認するなら、〔SV〕がつかまらないときの扱いも書く。
- 切ったあと: 同じ人がまたかけてきたら、最初に出た人が「この件はお答えできません」と伝える。2回目以降は〔SV〕が受けるか、窓口を1つにまとめる。
3は企業マニュアルの対応例によります。理不尽な問い合わせが繰り返されたら注意し、次回は対応できないと伝える。それでも続けば連絡先をリストにして通話内容を記録し、窓口を一本化したうえで、今後同様の問い合わせは受けないと伝える、とされています。何度もかかってくる相手には、あらかじめ対応できる時間を伝えて、それより長くは対応しない、という例もあります(P.29〜30)。
ほかの会社から電話応対を受託している窓口では、委託元との取り決めで、切ってよい条件や上位の窓口が決まっていることがあります。指針の義務を負うのはオペレーターを雇っている会社ですが、席に貼る手順が委託元との取り決めと食い違うと、オペレーターが板挟みになります。手順を決める前に取り決めを確かめ、必要なら委託元と合わせます。派遣のオペレーターについては、派遣先の会社も、自社の従業員と同じように指針の措置を講じる必要があります(指針 第2項⑶)。
電話窓口で起きやすい場面と、その場の動き
説明しても、同じ話が終わらない
指針は、長時間の電話で労働者を拘束することを、手段や態様が許される範囲を超える言動の例に挙げています(第2項⑸ロ⑤)。オペレーターは、応じられない理由を説明し、応じられないとはっきり伝えた時刻をメモします。そこから〔30分〕たったら、1回予告してから切ります。正当な問い合わせや苦情まで早く切る決まりではありません。指針は、社会通念上許される範囲の苦情は正当な申入れで、カスハラに当たらないとしています(第2項⑴)。
出典: 指針 第2項⑴、⑸ロ⑤、第4項⑴ロ / 企業マニュアル P.29〜30
同じ人が毎日かけてくる、同じメールを何通も送る
指針は、同様の質問の執拗な繰り返しと、同様の電子メールの執拗な繰り返しを例に挙げています(第2項⑸ロ④)。出たオペレーターごとに一から説明し直すと、相手は答えの違いを探して続けます。連絡先と日時、言われたことを記録して〔SV〕に渡し、2回目からは〔SV〕が受けるか、決めた1つの窓口で受けます。
出典: 指針 第2項⑸ロ④ / 企業マニュアル P.29〜30
オペレーターの名前や住所を聞き出そうとする、性的なことを言う
指針は、性的な要求や労働者のプライバシーに関わる要求を、言動の内容が許される範囲を超える例に挙げています(第2項⑸イ①)。オペレーターは個人の情報を答えず、性的な発言なら席に貼った3のとおり〔SV〕に転送します。「名前を名乗れ」とフルネームを求められたときにどこまで答えるか(名字だけ、受付番号だけ)は、窓口で先に決めておきます(当サイトの提案)。
出典: 指針 第2項⑸イ① / 企業マニュアル P.16〜17
「ネットに書くぞ」と言われる
指針は、インターネット上へ悪評を投稿することをほのめかす発言で労働者を脅すことを、精神的な攻撃の例に挙げています(第2項⑸ロ②)。企業マニュアルは対応例として、投稿者の処罰を望むなら警察へ、損害賠償を求めるなら必要に応じて弁護士に相談、削除を求めるなら法務局などに相談、を挙げています(P.29)。オペレーターはその場で言い返さず、言われた言葉をそのまま記録して〔SV〕に渡します。
出典: 指針 第2項⑸ロ② / 企業マニュアル P.29
電話窓口向けの一式の見本
カスハラ対策の指針の義務は、方針の明確化と周知、相談体制、起きた後の対応、特に悪質なものへの対処の方針と体制、プライバシーの保護と不利益な扱いの禁止です。ここに並べるのは、そのうち方針、初動、記録を電話窓口の形にした見本です。会社と担当者の名前を書き入れて全員に伝えると、方針の周知と相談の受け先が揃います。残りは無料のチェックで確かめられます。
方針(抜粋・見本)
〔会社名〕は、お客様のご意見を聞き、こちらの誤りは謝って改めます。一方で、オペレーターへの暴言、脅し、性的な発言、個人の情報を求めること、説明したあとも長時間同じ要求を続けることは認めません。こうした電話では、オペレーターは決めた手順で通話を終えてかまいません。一人で抱えず、すぐ〔SV〕に知らせてください。会社が対応します。相談したことで不利益に扱うことはありません。
もとにした箇所: 指針 第2項⑸イ①・ロ④⑤、第4項⑴イ・ロ、第4項⑸ロ(相談を理由とする不利益な扱いの禁止)
転送の順番(見本)
- オペレーター: 理由を説明し、応じられないとはっきり伝える。伝えた時刻をメモする。
- 〔30分〕続く、性的な発言、怒鳴り声が続く: 保留にして〔SV〕に知らせる。性的な発言は転送する。
- 〔SV〕: 代わって対応するか、決めた手順で通話を終える。
- 脅し、危害をほのめかす: 〔SV〕が警察に通報し、〔責任者〕に知らせる。
- 繰り返しかけてくる、法的な対応が要りそう: 〔責任者〕が窓口を一本化し、必要なら弁護士に相談する。委託元がある場合は〔委託元の担当〕にも伝える。
もとにした箇所: 指針 第4項⑴ロの対処の例(管理監督者等にすぐ報告して指示を仰ぐ、必要に応じて管理監督者等が代わって対応する、一定の時間で電話を切る、犯罪に当たり得る言動は警察へ、現場対応が難しければ本社・本部へ、法的な手続が要れば弁護士へ)、企業マニュアル P.16、P.29〜30。〔30分〕、切る前の予告、委託元への連絡は当サイトが足したものです。
記録する項目(見本)
日時 / 通話時間 / 受けたオペレーター / 相手の名前と連絡先(分かる範囲で) / 言われたことを、そのままの言葉で / 求められたこと / 「お受けできません」と伝えた時刻 / 何回目の電話か / 通話を終えたか、転送したか / 録音の有無 / 〔SV〕の対応 / 警察・弁護士への相談の有無 / オペレーターへの声かけ
事案と対応の経緯を記録して再発防止に使うことは、指針で「考えられる」取組です(第4項⑶ハ)。繰り返しの電話では、連絡先のリスト化と通話内容の記録が対応例に挙がっています(企業マニュアル P.29)。通話の録音は指針の対処の例で、録音するときは個人情報保護法などを守り、相手の個人情報を適切に扱うこととされています(第4項⑴ロ)。記録と録音は、見られる人を決めて保管してください。無料の相談記録台帳に主な項目が入っています。
今週と今月やること
今週
上の方針の見本と無料の方針ひな形を会社の名前で書き換え、席に貼る5行と一緒に全員に伝えます。パート、契約社員、派遣で来ているオペレーターも対象です(指針 第2項⑶)。シフトで全員がそろわない窓口は、各自のスマホで読める形にして、誰が読んだかを控えます。録音できる席とできない席があるなら、このときに確かめます(企業マニュアル P.27)。
今月
特に悪質な場合の方針を決めます。法令の制限内で、繰り返しかけてくる相手の電話をこれ以上受けない、法的な対応を検討する、といった線を決めて従業員に伝え、方針どおりに対処できる体制を整えることは、指針の義務です(第4項⑷)。受託の窓口なら、委託元とも合わせます。
無料の資料だけで足りる場合
責任者が毎日席にいて、オペレーターが数人で入れ替わりもない窓口なら、このページの見本と無料の資料で揃えられます。カスハラ研修ナビ(月額4,980円・税込、同時に50名まで、14日間無料、申込みにはカード登録が必要で、15日目から自動で課金、無料期間中に解約すれば請求なし)が役に立つのは、シフトや派遣で人が入れ替わり、各自のスマホで同じ内容を読んでもらい、受講を記録しておきたい窓口です。有料版の研修には、企業マニュアルの電話の対応例に沿ったコールセンター・電話窓口の場面(録音と記録、たらい回しにしない、長時間の拘束、繰り返しの電話、わいせつな発言や大声)が入っています。研修のデモで見られるのは飲食店の場面です。
まず、窓口に足りないものを確認
12の質問(業種はこのページから引き継ぐので省きます)に答えると、カスハラ対策の指針の5つの措置のうち窓口に足りないものが一覧で出て、足りないものごとに使える無料資料が分かります。登録は要りません。
当サービスで今使えるのは、無料のチェックと資料と、有料の研修、受講記録、相談窓口と困ったときの連絡先の登録(スタッフの研修画面に表示)、管理画面で方針・発生時の対処・初動フロー・掲示文をひな形から作る機能です。スマホからの事案の記録と年1回の見直しは準備中です。
うちの窓口に足りないものを確認する(無料・約2分)相談の受け先の決め方はカスハラの相談窓口、小さな会社はどう決める?に、パートや派遣の従業員への研修の考え方はカスハラ研修はパート・アルバイトにも必要?にあります。