店の形ごとの、担当者の決め方
マニュアルが上司や店長を挙げる理由は、日頃から現場の状況に詳しく、トラブルがあれば現場に駆けつけやすいからです。厚生労働省の令和5年度の調査でも、お客様などから著しい迷惑行為を受けた後の行動は「社内の上司に相談した」が38.2%で最も多くなっています(マニュアル 4.3.1、P.35)。
同じ箇所でマニュアルは、店長などを担当者にする場合、その店長自身が相談できる窓口を別に設けることも考えられるとしています。店長が怒鳴られた当人だったり、店長に言いにくい相談だったりする場合の行き先です。これを踏まえると、次のように決められます。
次の組み合わせは当サイトの提案で、指針やマニュアルの要件ではありません。
- 店が1つで、経営者が毎日店にいる担当者は経営者。経営者に言いにくいときの行き先として、副店長やパートのリーダーなど社内のもう一人か、社外の窓口(下の例)を決めます。
- 店長に任せていて、経営者は週に数回来る担当者は店長。店長自身の相談先と、店長に言いにくいときの行き先は経営者。
- 経営者が店長を兼ねている担当者は経営者。もう一人の行き先として、副店長やパートのリーダーなど社内の人か、社外の窓口(下の例)を決めます。
- 店が2つ以上ある各店の店長を担当者にし、店長たちの相談先を経営者か本部の担当1人にまとめます。
社外の窓口の例。 指針は、外部の機関に相談への対応を委託することも、窓口を決めている例に挙げています(指針 第4項⑵イ③)。小さな会社なら、顧問の社会保険労務士や弁護士の事務所に従業員からの相談を受けてもらう、外部の相談窓口サービスに委託する、といった形が考えられます(どちらも有料で、費用は契約によります)。費用をかけない場合は、社内でもう一人を決めるほうが現実的です(当サイトの考え)。
これとは別に、都道府県労働局などにある総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどあらゆる分野の労働問題について、労働者からも事業主からも無料・予約不要で相談を受けています(厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」)。会社が委託する窓口ではありませんが、貼り紙に書き添えておくと、社内に言えないときの行き先になります。
パワハラなどの相談窓口が既にあるなら、それを使っても構いません。指針は他のハラスメントの窓口と一緒に設けることも考えられるとし(指針 第4項⑵イ)、マニュアルも既存の窓口の活用を挙げています(P.35)。どの形でも、社内の関係者や外部の機関と連携が取りやすい体制にする必要がある、とマニュアルは書いています(マニュアル P.35)。
スーパーや販売店で、レジから誰をどの順で呼ぶかの見本はスーパー・小売店のカスハラ対策で揃えるもの一式にあります。
全員に配る1枚に書くこと
窓口について、指針が全員に伝えるよう求めているのは次の3つです。
- 相談窓口(指針 第4項⑵イ)
- 相談した人のプライバシーを守る措置をとっていること(指針 第4項⑸イ)
- 相談したこと、事実確認に協力したこと、労働局に相談したことなどを理由に、解雇などの不利益な扱いをされないこと(指針 第4項⑸ロ)
店のバックヤードに貼る紙や、店のLINEグループに流す文なら、たとえば次のように書けます(当サイトの文例)。名前と電話番号は実際のものに替えます。経営者が店長を兼ねる店は、2行目を「店長に言いにくいとき: 副店長 鈴木(090-0000-0000)」のように社内のもう一人か社外の窓口にします。
お客様からの暴言やしつこい要求で困ったら、一人で抱えずに相談してください。
相談先: 店長 山田(090-0000-0000)/ 店長に言いにくいとき: 代表 佐藤(090-0000-0000)
カスハラに当たるか迷う段階でも相談できます。相談した内容は、対応に必要な人にしか伝えません。相談したこと、事実確認に協力したこと、労働局に相談したことなどを理由に、シフトを減らす、辞めさせるといった不利益な扱いはしません。
社内に言いにくいときは、労働局の総合労働相談コーナー(無料)にも相談できます。
「迷う段階でも相談できる」と書くのは、指針が、実際に起きた場合だけでなく、起きるおそれがある場合や当たるか微妙な場合も広く相談に応じるよう求めているからです(指針 第4項⑵ロ)。伝え方として、指針は社内報やパンフレットなどの資料に載せて配る例を挙げています(指針 第4項⑸イ・ロ)。小さな店なら、貼り紙や全員に配る紙がこれに当たると考えられます(当サイトの考え)。不利益な扱いをしない旨は、就業規則などに定める例も挙げています。就業規則を書き換える場合は、従業員代表の意見を聞くなどの手続きが要ることがあるので、書き方は社会保険労務士に相談できます。
新しく入った人にこの1枚を伝える方法は、研修はパート・アルバイトにも必要?(10分で伝える7項目)にまとめました。
相談を受けた日にやること
相談を受けた後は、事実の確認、事実が確認できた場合の被害を受けた人への配慮、再発防止が義務になります(指針 第4項⑶)。担当者になった店長が、その日のうちに動く順番の例です。手順の中身は指針とマニュアルから取り、並べ方は当サイトで整理しました。
- 最初に、守ることを伝える「話した内容は必要な人にしか伝えない。相談したことで不利になることはない」。マニュアルは、プライバシーを守り不利益な扱いをしない旨を先に伝えてから事実確認をするとしています(4.4.1、P.37)。
- さえぎらずに聞く問い詰めるような聞き方にならないよう注意し、軽く見える相談でも、途中で「それくらい」と言わずに最後まで聞きます。マニュアルは、初期対応次第で相談者が会社や上司に不信感を抱くおそれがあるとしています(4.3.2、P.36)。
- 時系列でメモするいつ、どこで、相手が何を言いどうしたか、何分続いたか、相手が何を求めていたか。マニュアルの事実関係の整理の流れも、時系列の把握と相手の求めの把握から始まります(4.4.1、P.37)。
- 周りの人の話と、録音・録画を確かめる必要に応じて、そばにいた従業員からも話を聞き、録音・録画があれば確かめます。お客様の個人情報は個人情報保護法などに沿って扱います(指針 第4項⑶イ②)。
- その日のうちに、本人を守る手当てをする相手がまた来たら店長が代わって対応する、担当を替える、複数人で対応する、など。指針は、事実が確認できた場合に速やかに被害を受けた人への配慮の措置を行うことを義務とし、こうしたやり方を例に挙げています(第4項⑶ロ)。
- 危ないサインがあれば、すぐ専門家へ暴行、傷害、脅迫など犯罪に当たり得る言動は警察への通報が例に挙がっています(指針 第4項⑶ロ①)。相談した人に「死にたい」など自殺をほのめかす言動があれば、直ちに産業医などの医療の専門家につなぐことが求められるとマニュアルは書いています(4.3.2、P.36)。産業医がいない店では、本人の同意を得て医療機関につなぎ、差し迫った危険があれば119番します(当サイトの提案)。
- 後日、店の決まりを見直して伝え直す方針や対処の決まりを全員に改めて伝えるなどの再発防止は、カスハラだったと確認できなかった場合にも行います(指針 第4項⑶ハ)。メモは、個人情報に気をつけて残します。
担当者が適切に対応できるようにする方法
指針は、担当者が適切に対応できるようにしていると認められる例として、次の3つを挙げています(指針 第4項⑵ロ)。小さな店なら、上の7つの手順を紙にして担当者が手元に置くことが、2つ目の「マニュアルに沿って対応する」形の一つと考えられます(当サイトの考え)。
- 相談を受けたとき、内容や状況に応じて、担当者と関係する人や部門が連携できる仕組みにする
- 前もって作った、留意点などを書いたマニュアルに沿って対応する
- 担当者に、相談を受けたときの対応についての研修を行う
マニュアルは、担当者はその場でカスハラかどうかの判断を求められることもあるので、社内で決めた基準や手順を理解し、ケーススタディなどで対応を想定しておく必要があるとしています(4.3.2、P.36)。
窓口のほかに、足りないものを確かめる
相談窓口は、指針が義務とする5つの措置の1つです。方針、起きたときの対処、特に悪質な場合の対処など、ほかに足りないものがないかを約2分の診断で確かめられます。
自社の不足を確認する(無料・約2分)窓口の担当者を書き込める社内ルールのひな形は無料資料にあります。
スタッフが各自のスマホで読む研修(読む目安は約10分、推定)はデモで見られます。契約後は、研修の中に自社の方針、発生時の対処、相談窓口を表示できます。料金は料金ページ(月額4,980円・税込)にあります。