パート・アルバイト、派遣の人も伝える相手
指針の「労働者」は、正社員だけでなく、パートタイム労働者、契約社員など、事業主が雇用するすべての労働者です(指針 第2項⑶)。週1回だけ入る学生アルバイトも当たると考えられます。
派遣で受け入れている人についても、受け入れ先の事業主は、自社で雇う労働者と同じように措置を講ずる必要があるとされています(同)。派遣の人にも、店での報告先と対処の手順を伝えます。
全員を一度に集められない店は、どう伝えるか
シフトがばらばらで全員がそろう日がない店は、集合研修にこだわる必要はありません。指針は、方針を資料に書いて配ることや、対応マニュアルに書いて伝えることも、周知の例に挙げています(第4項⑴イ①、ロ②)。
ここからは当サイトの提案で、指針やマニュアルの要件ではありません。
- A4の1枚にまとめる。 下の7項目を書いた紙を作ります。方針と社内ルールのひな形(無料)を店の名前と報告先に書き換えると早くできます。
- シフトに入ったときに、責任者が10分で読み合わせる。 2週間あれば、週1回の人にも当たります。紙をロッカーに貼るだけだと、読んだかどうか分かりません。
- 読み合わせた日を名前の横に書く。 まだの人がひと目で分かります。受講記録シート(無料)がそのまま使えます。
- 新しく入った人は、初日に同じ10分を受ける。 制服や鍵の説明と同じ日にすると漏れにくくなります。マニュアルも、中途入社の人やパート・アルバイトなどに入社時に研修や説明を行い、漏れなく全員が受けられるようにしましょう、と勧めています(マニュアル 4.2.2(4)、P.34)。
10分で伝える7項目
指針が義務とする5つの措置(方針、対処の内容、相談窓口など)を社内で決めたら、その中身を全員に伝えます。店で話す言葉に置き直すと次の7つです。太字は指針の該当箇所、その下は店での言い方の例(当サイトの例)です。3〜5は、指針が「対処の内容の例」(限定列挙ではない)として挙げるものから選んでいます。
- 会社の方針(第4項⑴イ)「理不尽な要求や暴言からは、店が皆さんを守ります。一人で我慢しなくていい」
- カスハラとはどういうものか(第4項⑴ロ)「商品への苦情は普通のお客様の声。何十分も同じ要求を繰り返す、怒鳴る、土下座を求める、は別物です」。自分の店で起きやすい例を1つ入れます。
- その場で誰に報告するか(第4項⑴ロ)「困ったら、その場で○○さんを呼ぶ。いなければ△△さんに電話」。名前と電話番号まで書きます。
- その場の対処(第4項⑴ロ)「一人で続けない。説明しても同じ要求が続くなら、責任者が代わって退店をお願いする」。何分で切り上げるかは指針に書かれていないので、店で決めます。たとえば「同じ説明を2回しても要求が続く、または30分を超えたら責任者に代わる」(当サイトの例)。
- 警察を呼ぶ場面(第4項⑴ロ・⑷)「殴る、物を壊す、脅す、は責任者の許可を待たずに110番してよい」。指針は暴行、傷害、脅迫など犯罪に当たり得る言動の警察への通報を例に挙げています。
- あとで相談する先(第4項⑵イ)「その場が終わっても、つらかったことは□□さんに話してください」。相談窓口の決め方は相談窓口の記事にあります。
- 相談しても不利にならない(第4項⑸イ・ロ)「相談した内容は必要な人にしか伝えない。相談したことで、シフトを減らしたり辞めさせたりはしない」
マニュアルは研修の内容例として、正当な苦情との違い、類型別の対応、記録の作り方、ケーススタディなども挙げています(4.2.2(4)、P.34)。最初の10分では上の7つを優先し、残りは受け直しの機会に足すと進めやすくなります(当サイトの提案)。
受け直しは、いつ・どのくらい
マニュアルは研修などを「定期的に実施することが重要」としていますが、頻度は書いていません(P.34)。年に1回、たとえば新人が増える春や繁忙期の前など、店で時期を決めて予定表に書いておきます(当サイトの提案)。
カスハラが実際に起きたあとは、方針と対処の内容を改めて伝えることが再発防止の措置になります(指針 第4項⑶ハ)。その店で起きたことを例にして10分の読み合わせをやり直すと、次に同じ場面が来たときの動きがそろいます(当サイトの提案)。
受講の記録は義務?
指針の本文には、研修の受講記録を残すよう求める定めは見当たりません。それでも、誰がいつ受けたかの一覧があると、伝え漏れのある人に気づけますし、全員に伝えたことを後から確かめられます(当サイトの考え)。紙やExcelなら受講記録シート(無料)、スタッフがスマホで読んで受講日が自動で残る形なら研修のデモで見られます。
指針で「研修」が出てくる6つの場面と、その強さ
ここは根拠を確かめたい人向けです。厚生労働省の指針には「研修」という語が何度も出てきます。場面でまとめると次の6つで、強さはそれぞれ違います。「講じなければならない」とされているのは周知などの措置で、研修はその措置を「講じていると認められる例」として挙がっています。
- 全員への周知(第4項⑴イ・ロ): 義務の措置の「例」方針と対処の内容を全員に伝えることが義務。研修・講習はそのやり方の例で、方針を書いた資料を配る、接客マニュアルに書いて伝える、も同じく例に挙がっています。
- 相談窓口の担当者(第4項⑵ロ): 義務の措置の「例」担当者が相談に適切に対応できるようにすることが義務。担当者への研修は例の一つで、留意点を書いたマニュアルに沿って対応する、関係部門と連携できる仕組みにする、も並んでいます。
- 相談した人のプライバシー(第4項⑸イ): 義務の措置の「例」プライバシーを守る措置をとり、そのことを全員に伝えるのが義務。窓口の担当者へのプライバシー保護の研修は例の一つです。
- 起きた後の再発防止(第4項⑶ハ): 義務の措置の「例」方針を改めて伝えるなどの再発防止が義務。研修・講習を改めて行うことは例の一つで、資料に改めて載せて配ることも例です。
- 従業員の理解を深める(第3項⑴、法第34条第2項): 努力義務カスハラ問題への従業員の関心と理解を深め、従業員が他社の働く人への言動に注意を払うよう、「研修の実施その他の必要な配慮」をするよう努めるとされています。
- 接客や商品の研修、お客様の心理や障害特性の研修(第6項⑴): 望ましい取組義務の措置(第4項)に加えて行うことが望ましい、とされている取組です。
つまり、義務を果たすために研修という形式は必須ではありません。外せないのは、伝える中身を決めて、全員に届けることです。
研修の前に、足りないものを確かめる
伝える7項目のうち、報告先や相談窓口がまだ決まっていないなら、研修より先にそちらを決めます。どれが足りないかは、約2分の診断で確かめられます。飲食店で店長がいない時間の初動を決めるなら、飲食店向けの一式に見本があります。
自社の不足を確認する(無料・約2分)スタッフが各自のスマホで読む研修(読む目安は約10分、推定)と受講記録の一覧は、デモで見られます。自社で使う場合の料金は料金ページ(月額4,980円・税込)にあります。