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障害福祉事業所のカスハラ対策:家族の強い要求と利用者の言動、初動と記録の見本

家族からの長い電話や強い要求で職員が参っているなら、まず、その家族への対応を職員から管理者に移します。そのうえで、利用者の障害の特性や病状から出た言動は支援の方法を見直し、家族や利用者からの契約にないサービスの繰り返しの要求は、事業所として線を引いて伝えます。どちらでも、職員を一人で対応させないことは同じです。

職員を1人でも雇っている事業所は、2026年10月1日から、利用者や家族からのカスハラへの対策が義務になりました(労働施策総合推進法第33条)。

公開日・更新日: 2026年11月7日 / 指針(令和8年厚生労働省告示第51号)と、厚生労働省「障害福祉サービス等事業者向け 職員を利用者・家族等によるハラスメントから守るために」(令和4年3月)の本文で確認

うちの事業所に足りないものを確認する(無料・約2分)
!!管理者が代わる

職員がもう参っているとき、明日やること

  1. その家族(または利用者)への対応を、当面は管理者が引き受けると決め、職員に伝える。電話は管理者に回してよいことにする。
  2. 受けた職員と話す時間をとり、何を言われたかを聞いて、そのままの言葉で記録する。担当やシフトを変えたいか、本人の意向を聞く。
  3. 家族と話す日を決める。事業所だけで難しければ、相談支援事業所の相談支援専門員や、市町村の障害福祉の担当課に同席を頼む。

もとにした箇所: マニュアル P.10(相談者の意向や要望を必ず記録する)、P.12〜13(受けた職員が相手と距離を取れるよう担当やシフトを調整する、職員の意向を聞く)、P.12〜13(家族への説明・話し合い、必要に応じて関係機関に立ち会ってもらう)。1の「電話を管理者に回す」は当サイトが足した項目です。指針も、必要に応じて管理監督者が職員に代わって対応することを対処の例に挙げています(第4項⑴ロ)。

障害福祉の現場で起きる場面

障害福祉の現場向けマニュアルに、事業所の対応事例として載っている場面です。

朝の送迎中、運転していた職員が利用者に急に殴られた

就労継続支援B型の事例です。事業所に着いてすぐ管理者に報告し、管理者が利用者と職員の両方から話を聞き、家族に来てもらって状況を説明しました。翌日に面談し、医療機関や相談支援事業所と連絡を取った結果、服薬の調整が行われ、落ち着くまで利用を見合わせました。再開のときは運転席と後部座席の間にパーテーションを付け、職員の気持ちが落ち着くまでは別の職員が送迎を担当しました。

出典: 障害福祉の現場向けマニュアル P.23(事例1)

電話で望む答えが得られず、強い口調で脅された

居宅介護の事例です。その場では反論せず聞くことに徹し、電話は相手から切られました。後日、落ち着いたときに電話の内容を一緒に振り返り、責めずに話したことで本人からの謝罪につながりました。マニュアルは、その場で反論しなかったことでエスカレートせずに済んだ、としています。反論しないことと、長時間聞き続けることは別です。続くときの切り方は、下の初動の見本にあります。

出典: 同 P.24(事例2)

庭の手入れなど契約にないサービスを繰り返し求められ、体を触られる

居宅介護の事例です。できないと説明しても「なぜ出来ないのか」と繰り返し迫られ、ヘルパーの体を触るなどの行為もありました。同性の職員による介助を提案しましたが断られ、事業所は自治体に相談して「2人での介助」が認められました。本人は一人での介助を求め続けていて、定期的に話し合いを続けています。

出典: 同 P.27(事例5)

障害特性による言動と、カスハラとして扱う要求の分け方

カスハラ対策の指針は、障害のある方が、差別的な扱いをしないよう求めることや、社会的な障壁を取り除くよう求めること自体はカスハラに当たらない、としています(指針 第2項⑴)。対策を進めるときは、障害者差別解消法の不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供義務に留意し、サービスが止まると利用者の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合があることにも留意する、とも書いています(第4項の冒頭)。

障害福祉の現場向けマニュアルは、ハラスメントの背景に、事業所への不満や不信から感情的に起きるものや、利用者の心身の状況と職員の支援方法が合っていないことから起きるものがあるとしています(P.5)。詳しい解説は障害福祉事業所のカスハラ対策、義務化で何をする?にあります。

2つの資料をもとに、当サイトは次の分け方をすすめます。

  1. 障害の特性や病状、支援の方法とのずれが背景にあると考えられるとき(暴力や暴言でも): 支援の方法、環境、服薬などを、医療機関や相談支援事業所と一緒に見直す。事例1は、送迎中の暴力に服薬の調整と支援の見直しで対応しました。事例2は、後日の振り返りで対応しました。
  2. そうした事情が見当たらず、説明しても続くとき、契約や制度で提供できないサービスの要求が繰り返されるとき: 事業所としてできないことを説明し、職員の体制を変える(2人での介助など)。解決しなければ自治体や相談支援事業所に入ってもらう(事例5)。
  3. どちらに当たるかは、受けた職員一人で決めない。管理者が、利用者の状態を知っている人の意見を聞いて判断する。

職員を守る対応は、1と2のどちらでも同じです。マニュアルは、受けた職員がその利用者や家族と距離を取れるようシフトや担当を調整し、難しい場合は複数人で対応して1対1にしないことを挙げています(P.12〜13)。

家族からの言動も、指針の「顧客等」に含まれます(指針 第2項⑷の「施設・サービスの利用者及びその家族」)。マニュアルは、事業所から利用者・家族等に説明し、必要なら第三者委員や相談支援事業所、行政の担当者(マニュアルの言葉では「行政の担当ケースワーカー」)に立ち会ってもらい、落ち着いた状態で話し合う、としています(P.12〜13)。

障害福祉事業所向けの一式の見本

指針の義務は、方針の明確化と周知、相談体制、起きた後の対応、特に悪質なものへの対処の方針と体制、プライバシーの保護と不利益な扱いの禁止です。ここに並べるのは見本です。事業所名と担当者の名前を書き入れて職員全員に伝えれば、5つのうち方針の周知と相談の受け先に当たります。残りは無料のチェックで確かめられます。

方針(抜粋・見本)

〔事業所名〕は、利用者さんとご家族のご意見を聞き、事業所の誤りは謝って改めます。暴力、脅し、性的な言動などを受けた職員は、理由にかかわらず一人にせず、相手と距離を取れるようにします。そのうえで、障害の特性や病状、支援の方法とのずれが背景にあると考えられる場合は、支援の方法を見直します。そうした事情が見当たらず、説明しても続く場合や、契約にないサービスの要求が繰り返される場合は、対応の体制を変えます。

職員は、こうした言動を受けたら一人で抱えず、すぐ〔管理者〕に知らせてください。相談したことで評価などで不利益に扱うことはありません。障害特性によるものかどうかを、受けた職員が一人で判断する必要はありません。

もとにした箇所: 指針 第2項⑴、第4項の冒頭、⑴イ、⑸ロ / マニュアル P.4(行為の分類)、P.5(相談しても不利益がないことを明確に示す)、P.12〜13

利用者・ご家族へのお知らせ(重要事項説明に添える見本)

当事業所が提供するサービスの範囲は、別紙のとおりです。範囲外のご依頼は、そのままではお受けできないことがあります。障害による配慮のご相談を含め、〔担当者〕にご相談ください。職員への暴力、脅し、性的な言動などがあった場合は、職員の安全のため、職員の人数や担当を変えることがあります。サービスの内容や時間の変更は、ご本人・ご家族と話し合い、相談支援事業所とも相談して決めます。やむを得ずその場で支援を中断したときは、すぐにご連絡します。

マニュアルは、契約書や重要事項説明に、職員へのハラスメントによるサービスの中断や変更の可能性を書いておくこと、提供できるサービスの範囲を別紙で用意して説明することを挙げています(P.21)。指針は、方針を利用者や家族に知らせることを「効果的と考えられる」取組としていて、義務ではありません(第4項⑴イ)。契約書や重要事項説明書を変えるときは、指定権者(都道府県や市町村)の基準や指導の内容を確かめてください。

場面ごとの初動(抜粋・見本)

  1. 家族から電話で長く責められたら: 十分に説明しても同じ要求が続くときは、「この件は〔管理者〕から改めてご連絡します」と伝えて切る。何分を目安にするか(たとえば30分)は事業所で決めておく。次からその家族の電話は管理者に回す。
  2. 送迎中に暴力があったら: 安全な場所に車を止め、ほかの利用者の安全を確かめて、事業所に連絡し応援を呼ぶ。事業所に着いたらすぐ管理者に報告する。
  3. 利用者本人から電話で脅されたら: その場で反論しない。終わったらすぐ管理者に報告する。
  4. 訪問先で体を触られた、性的なことを言われたら: その場ではっきり断り、すぐ事業所に連絡する。その場の支援をどうするかは管理者が指示する。中断するときは、利用者がそのあとすぐ危険な状態にならないか(服薬、食事、排せつなど)を管理者と電話で確かめ、代わりの職員や家族への連絡は管理者が決める。次回からの体制(2人での訪問など)も管理者が決める。
  5. 契約にないサービスを求められたら: 自分では引き受けず、「事業所で確認します」と伝えて管理者に引き継ぐ。

もとにした箇所: 指針 第4項⑴ロ(十分に説明しても繰り返しの要求が続く場合に一定の時間で電話を切る、管理監督者が代わって対応する)/ マニュアル P.23(すぐ管理者に報告、双方から聞き取り)、P.24(その場で反論せず受け止める)、P.27(2人での介助)、P.12〜13(距離を取る、職員の意向)、P.21(訪問系サービスで応援できる体制をあらかじめ考えておく)。1の「30分」は当サイトの例で、どちらの資料にも数字はありません。2の車の止め方と応援、4の「支援は管理者が指示」、5は当サイトが足した項目です。サービスの中断や変更は、指定権者の基準を確かめて事業所が判断します。指針は、サービスが止まると利用者の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合があることに留意するよう求めています(第4項の冒頭)。暴行や脅迫など犯罪に当たり得る言動の警察への通報は、指針が対処の例に挙げています(第4項⑴ロ)。

記録する項目(見本)

日時 / 場所(送迎車、事業所内、利用者の自宅、電話) / 利用者本人か家族か / 言われたこと・されたことを、そのままの言葉で / その前後の状況(体調、服薬、苦手な人や場面があったか) / 何回目か / 受けた職員と、報告を受けた管理者 / 事業所がした対応 / 相談した外部の機関(医療機関、相談支援事業所、自治体) / 受けた職員の意向と、シフト・担当の変更 / 完了日

マニュアルは、相談者の意向や要望を必ず記録し、受付票の書式を用意しておくこと(P.10、受付票の例は P.11)、以前から見られた行為と関連づけて背景を分析すること(P.26、事例4)を挙げています。「前後の状況」はそのための欄です。体調や服薬は配慮の要る個人情報なので、この記録を見られる人は管理者などに限ってください(指針 第4項⑶ハ)。無料の相談記録台帳に主な項目が入っています。

揃える順番

今日

事業所の連絡ボードか連絡ツールに、「暴力・脅し・性的な言動・契約外の要求・長い電話は、すぐ〔管理者〕へ。障害特性かどうかは一人で判断しない」の1行と、管理者と、出られないときの2番目の人(サービス管理責任者など)の電話番号を載せます。送迎車と訪問用のかばんにも同じ紙を入れます。終わったら無料のチェックで、ほかに足りないもの(相談した職員のプライバシーの守り方など)を確かめます。

今週

上の方針の見本と無料の方針ひな形を事業所名で書き換え、朝礼や申し送りで全員に伝えます。パートや非常勤の職員も対象です(指針 第2項⑶)。

今月

提供できるサービスの範囲を別紙にまとめ、重要事項説明に添えるお知らせの文を決めます。事業所だけで解決できないときに相談する先(相談支援事業所、自治体の担当窓口、第三者委員)の連絡先を、管理者の手元に控えます(マニュアル P.21)。

無料の資料だけで足りる場合

管理者が毎日事業所にいて、職員が数人で入れ替わりもない事業所なら、障害福祉の現場向けマニュアルと無料の資料で揃えられます。カスハラ研修ナビ(月額4,980円・税込、同時に50名まで、14日間無料、申込みにはカード登録が必要)が役に立つのは、シフト勤務や訪問で全員を集めにくく、各自のスマホで同じ内容を読んでもらい、受講を記録しておきたい事業所です。有料版の研修には「介護・福祉の仕事の方へ」の章(介護現場向けマニュアルに基づく、病気や障害の症状による言動の考え方、訪問の連絡など)がありますが、送迎など障害福祉に固有の場面はまだ入っていません(準備中)。研修のデモで見られるのは飲食店の場面です。

まず、事業所に足りないものを確認

12の質問(業種はこのページから引き継ぐので省きます)に答えると、指針の5つの措置のうち事業所に足りないものが一覧で出て、足りないものごとに使える無料資料が分かります。登録は要りません。

当サービスで今使えるのは、無料のチェックと資料と、有料の研修、受講記録、相談窓口と困ったときの連絡先の登録(スタッフの研修画面に表示)、管理画面で方針・発生時の対処・初動フロー・掲示文をひな形から作る機能です。スマホからの事案の記録と年1回の見直しは準備中です。

うちの事業所に足りないものを確認する(無料・約2分)

相談の受け付け方や小規模な事業所での配慮の詳しい解説は障害福祉事業所のカスハラ対策、義務化で何をする?に、介護保険の事業所は介護事業所向けの一式にあります。