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介護事業所のカスハラ対策、義務化で揃えるもの一式
職員を1人でも雇っている介護事業所は、2026年10月1日から、利用者や家族からのカスハラへの対策が義務になりました。根拠は労働施策総合推進法の第33条で、何をするかは厚生労働省の指針が定めています。揃えるのは、事業所の方針と職員への周知、相談の受け先、起きた後の動き方の3つが中心です。介護現場マニュアルは1対1の状況をリスク要因の1つとしているので(P.40)、職員が訪問先で一人になる時間を前提に決めておきます。
公開日・更新日: 2026年11月6日 / 労働施策総合推進法第33条、指針(令和8年厚生労働省告示第51号)と「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」(令和4年3月改訂)の本文で確認
自社の不足を確認する(無料・約2分)介護の現場で起きる場面
厚生労働省の介護現場マニュアルに例として載っている場面です。マニュアルは、介護は利用者と職員が1対1になる場面が多いとしています(P.18)。
入浴介助の最中に、性的な話をされる
入浴介助の最中に、あからさまに性的な話をされる。必要もないのに手や腕を触られる。マニュアルはどちらもセクシュアルハラスメントの例に挙げています。
出典: 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル P.4
利用者や家族から「この程度できて当然」と求められる
「この程度できて当然」と、理不尽なサービスを求められる。マニュアルは精神的暴力の例に挙げています。また、サービスの範囲の説明が足りないことが苦情や暴言のきっかけになるとし、契約の範囲外のサービスが強要されないようにすることを求めています。
出典: 同 P.4、P.15
事情を確かめると「言ってない」「やってない」と言われる
職員の報告を受けて事業所が経緯を確かめると、相手が「言ってない」と否定したり、「その前に失礼なことをした」と職員のせいにしたりする。マニュアルは、1対1の場面が多い介護では、ハラスメントかどうかの判断が難しいケースが多いとしています。
出典: 同 P.18
介護事業所が使う2つの資料と、その関係
義務の中身は、厚生労働省の指針で決まっています。方針を決めて全員に伝える、相談に応じる体制を作る、起きた後に対応する、特に悪質なものへの対処を決める、相談した人のプライバシーを守り不利益に扱わない、の5つです。利用者とその家族からの言動も、利用者の自宅での言動も対象です。
介護ならではのやり方は、厚生労働省の介護現場マニュアルに書いてあります。義務ではなく、やり方の参考です。介護事業所の方針では、ほかの業種と違って書き分けが要る点が2つあります。
- 認知症などの症状として出た言動(BPSDなど)は、ハラスメントとしてではなく、医療的なケアによってアプローチするものとされています。ただし職員の安全への配慮は同じように必要で、職員が一人で抱えずに報告できることが前提です(マニュアル P.4)。どちらに当たるかは、主治医やケアマネジャーの意見も確かめて判断します(P.5)。
- 事業所の側から契約を解除するには、運営基準上の「正当な理由」が必要です(マニュアル P.12)。お願い文や契約書に「解除することがあります」と書くだけで、解除できるようになるわけではありません。
症状による言動か迷うときの手順と、契約の解除を考えるときの判断材料は、認知症の症状か迷うとき・契約を解除できるときの解説に詳しく書いています。
介護事業所向けの一式の見本
指針の義務は、方針の周知、相談体制、起きた後の対応、悪質なものへの対処の方針と体制、プライバシーの保護と不利益な扱いの禁止です。下の利用者・家族へのお願い文と事案の記録は、指針が「効果的」「考えられる」とする取組で、義務そのものではありません。どれも、マニュアルの例をもとに、小さな訪問介護・通所の事業所で使う形に書き直した見本です。そのまま使えば義務を満たせるものではありません。事業所の実情に合わせて決めてください。
方針(抜粋・見本)
〔事業所名〕は、利用者さまとご家族に、安心して介護サービスを使っていただくことを大切にします。同時に、職員への暴力、暴言、性的な言動は、どなたからであっても認めません。職員による虐待も、職員へのハラスメントも、どちらもあってはならないと考えます。
職員がこうした言動を受けたときは、一人で抱えず、すぐに〔管理者名〕か〔相談先〕に報告してください。誰に報告しても、事業所として同じ対応をします。認知症などの症状による言動のときも、職員の安全を守るために報告してください。相談したことで不利益に扱うことはありません。相談の内容は〔担当者〕以外に知らせません。
もとにした箇所: マニュアル P.14、P.4
利用者・ご家族へのお願い(抜粋・見本)
職員が安全に、落ち着いてケアをできるよう、次のことにご協力ください。
・訪問中は、ペットをケージに入れるか、別の部屋にお願いします。
・職員へのお礼の品やお金はお断りしています。
・契約にないことをお頼みいただいた場合、職員はその場でお受けできません。ご希望は〔担当者〕にご相談ください。
・暴言、暴力、性的な言動はお断りします。職員の安全が守れないときは、サービスを中断することがあります。
ペットやお礼の品の項目は、マニュアル P.38 に載っている訪問看護ステーションの例にならいました。トラブルのきっかけになりやすいことを、契約書とは別の柔らかい文で先に伝えている例です。中断や解除の扱いは、契約書・重要事項説明書の定めと揃えてください。中断も、利用者の生活への影響を踏まえて個別に判断が要ります。
訪問先での初動(抜粋・見本)
- 身の危険を感じたら、ケアの途中でもその場を離れる。
- 事業所に電話し、利用者の状態も伝える。例: 平日の日中は〔サービス提供責任者〕、夜間と土日は〔管理者の携帯〕、つながらなければ〔次の人〕。
- 管理者が状況を聞き、その日の続きと次回の訪問の体制を決める(担当の交代、2人での訪問、管理者の同行など)。
- 必要に応じて、管理者がケアマネジャー、地域包括支援センター、主治医、行政、警察に連絡する。
- その日のうちに記録する。
もとにした箇所: マニュアル P.18、P.40。指針も対処の例に「可能な限り労働者を一人で対応させないこと」を挙げています。
記録する項目(見本)
受付日 / 報告した職員(取扱注意) / 相手(利用者本人か、家族等か) / 日時 / 場所(訪問先の居室、浴室、送迎車内など) / 言われたこと・されたことを、そのままの言葉で / その場でとった対応 / 報告を受けた人と時刻 / 症状による言動の可能性と、主治医・ケアマネジャーへの確認 / 職員への配慮(担当の交代、休みなど) / 次回からの体制 / 完了日
もとにした箇所: マニュアル P.18、P.5、P.35。紙で残すなら、この項目をそのまま記録用紙の見出しにしてください。表計算ソフトで残すなら、無料の相談記録台帳に「症状の可能性」と「次回からの体制」の列を足すと使えます。
揃える順番
今日
無料のチェックで、指針の措置のうち足りないものを確かめます。そのうえで、訪問中の職員が事業所に電話したとき、時間帯ごとに誰が受けるかを決めます(上の「訪問先での初動」の2)。管理者の携帯1本しかない事業所でも、つながらないときの次の人を1人決めておけば、職員が一人で判断する場面を減らせます。
今週
上の見本と無料の方針ひな形を事業所名で書き換え、登録ヘルパーやパートも含めて全員に伝えます。マニュアルは、掲示板や連絡ツールで流すだけでは読まれないことがあるとして、会議や研修での周知もすすめています(P.29)。会議に全員が集まれない事業所は、各自のスマホで読める研修を使う方法もあります(デモ)。
今月
契約書と重要事項説明書の、サービスの範囲の説明と、中断・解除の定めを見直す候補に挙げ、変えるかどうかは弁護士に相談します。顧問の弁護士がいない事業所も多いはずです。マニュアルは、事業所だけで法令に即して対応するのが難しいときの連携先に、保険者、地域包括支援センター、地域の事業者団体、法律の専門家を挙げています(P.11)。加入している事業者団体や保険者に、相談できる先を聞くところから始められます。新しい利用者の情報をケアマネジャーから受けて担当を決める手順(マニュアル P.16、P.41)も、このときに決めます。
厚生労働省の資料だけで足りる場合
管理者がマニュアルと研修の手引きを読み込む時間をとれて、職員が会議に集まれる事業所なら、無料の資料だけで揃えられます。カスハラ研修ナビ(月額4,980円・税込、同時に50名まで、14日間無料)が役に立つのは、訪問やシフトで全員を集めにくく、誰が研修を受けたかを残しておきたい事業所です。
まず、自社に足りないものを確認
12の質問(業種はこのページから引き継ぐので省きます)に答えると、指針の措置のうち事業所に足りないものと、次に読む資料が分かります。登録は要りません。
当サービスで今使えるのは、無料のチェックと資料と、有料の研修、受講記録、相談窓口と困ったときの連絡先の登録(スタッフの研修画面に表示)、管理画面で方針・発生時の対処・初動フロー・掲示文をひな形から作る機能です。スマホからの事案の記録と年1回の見直しは準備中です。
自社の不足を確認する(無料・約2分)方針と社内ルールのひな形は無料資料にあります。認知症の症状か迷うときと契約解除の判断は介護のカスハラの解説、障害福祉の事業所は障害福祉事業所のカスハラ対策をご覧ください。