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カスハラ対策の義務化、中小企業は何をすればいい?

2026年10月1日から、カスハラ対策はすべての事業主の義務です。小さな職場なら、方針と、起きたときの対処と、相談先を紙1枚にまとめ、パートやアルバイトを含む全員に渡すところから始められます。義務の中身は厚生労働省の指針にある5つの措置で、研修や就業規則の変更は、それ自体が義務なのではありません。

更新日: 2026年11月6日 / 指針(令和8年厚生労働省告示第51号)と企業マニュアル(令和8年度改訂版)の本文で確認

今週やること

  1. 1枚にまとめる。書くのは、カスハラには毅然と対応し従業員を守るという方針、カスハラに当たる言動の例、起きたときの対処、特に悪質な場合の対処、相談先、相談した人を守ること。当サイトの無料資料に方針と社内ルールのひな形があり、書き換えて使えます。
  2. 店長がいない時間の動き方を書き足す。次の節の5項目です。小さな職場で一番抜けやすいところです。
  3. 全員に渡す。パート、アルバイト、契約社員も対象です。派遣で来ている人にも、受け入れ先として同じ措置が要ります。これから入る人にも渡せるよう、入社時の書類に加えます。
  4. 相談を受けたときの手順を決める。誰が話を聞くか、どこに記録するか。無料資料に初動フローと相談記録台帳があります。

相談先は、店長1人が管理職という職場なら、店長本人で構いません。指針も、上司に当たる管理職を担当者にすることも考えられるとしています。ただ、店長自身がそのお客様に対応していた場合などに備え、もう1人(経営者、本部、別店舗の責任者など)を挙げておくと、スタッフが相談しやすくなります(この2人目は当サイトの提案です)。決め方は相談窓口の記事に書きました。

店長がいない時間に、何を決めておくか

場面の例(説明のために作った例です)

状況平日の夜。店にいるのはアルバイト2人。店長は休み。

電話「昼に買った商品の件だ。今すぐ責任者を出せ。出せないなら店まで行くぞ」

状況電話は25分続いている。2人とも、誰に連絡してよいか知らない。

指針は、起きたときの対処を決めるにあたり、管理職がその場ですぐ対応しなければならない場合もあることを踏まえるよう求めています。企業マニュアルはさらに、小規模な店舗や時間帯によっては管理職がその場にいないことも想定し、現場の従業員だけでも対応できるよう基本的な対応方法を伝えておく必要がある、としています。

シフトに管理職のいない時間があるなら、対処の欄に次の5つまで書いておくと、その時間のスタッフが動けます。指針とマニュアルの例をもとに当サイトがまとめたもので、中身は自社で決めます。

  1. 連絡する相手を2人目まで店長の携帯と、つながらないときの相手。電話番号まで書きます。
  2. その場で言ってよい一言マニュアルの例は「上長に確認いたしますので、大変恐れ入りますが、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」。時間がかかりそうなら一度お引き取りいただき(電話なら切り)、後日、会社としての対応を伝える方法もマニュアルに載っています。
  3. 切り上げてよい条件指針の例は「労働者から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすること」。何分とするかは指針に書かれていないので、自社で決めます。
  4. 110番してよい場面暴行、傷害、脅迫など犯罪に当たり得る言動は警察に通報する、と指針にあります。「店長の許可を待たずに通報してよい」と書いておかないと、アルバイトは迷います。
  5. 翌日、誰に何を伝えるか日時、相手の言ったこと、何分続いたか。相談を受けたあとの事実確認の材料になります。

義務の5つ

指針が「講じなければならない」としているのは次の5つです。小さな字は、指針に書かれた補足と、指針が「認められる例」として挙げるやり方の一部です。

  1. 方針と対処の内容を決めて、全員に伝える管理職を含む全員に伝えます。例: 方針を書いた資料を配る、接客マニュアルに書く、研修や講習で伝える。
  2. 相談窓口を決めて全員に伝え、担当者が適切に対応できるようにする窓口の例: 相談を受ける担当者を決める、外部の機関に委託する。他のハラスメントの窓口と一緒にすることも考えられる、と指針は書いています。担当者が対応できるようにする例: 留意点をまとめたマニュアルに沿って対応する、担当者に研修をする。カスハラに当たるか微妙な相談も広く受けます。
  3. 相談があったら、事実の確認、被害を受けた人への配慮、再発防止配慮の例: 管理職が代わって対応する、担当を替える、複数人で対応する。再発防止は、事実が確認できなかった場合にも同じように行います。
  4. 特に悪質なケースへの対処方針を決め、実行できるようにしておく指針の例: 警察への通報、警告文、法令の範囲内での販売やサービスの停止、出入り禁止。あわせて、決めた対処を実際に行える体制を整えることが義務です(誰が判断し、誰が警告文を出すかを名前で決めておく、は当サイトの提案です)。
  5. 相談した人のプライバシーを守り、不利益に扱わないと定めて伝える相談したことや事実確認に協力したことを理由とする解雇などの不利益な扱いは、法律で禁じられています。指針は、その旨を定めて全員に伝えることを求めています。

1と4は同じ紙にまとめて構いません。指針も、対処の内容を決めるときに悪質なケースの方針をあわせて定める形を例に挙げています。

研修、就業規則、掲示は必要?

研修
伝える方法の例の一つで、配布資料やマニュアルで伝えても例に当たります。ただ、企業マニュアルは、研修をするなら全員が受講し、定期的に行うことが重要としています。入れ替わりの多い職場の考え方は研修の記事に書きました。
就業規則
「相談した人を不利益に扱わない」を定める場所として、指針は就業規則などの文書に書く例と、配布資料に書いて配る例を並べています。就業規則に書き足す場合は、常時10人以上が働く事業場なら、過半数労働組合または過半数代表者の意見を聞き、労働基準監督署長に届け出る手続きが要ります。どちらにするか迷う場合は社会保険労務士に相談できます。
掲示
お客様に方針を知らせることは、被害の防止に「効果的と考えられる」と指針は書いています。従業員への周知とは別で、義務ではありません。
記録
事案の内容と経緯を記録し再発防止に生かすことは、指針で「考えられる」とされる取組です。義務ではありませんが、あとで事実を確かめるときの材料になります。

業種によって、書けないことがある

法律でサービスの提供義務がある業種や、サービスが止まると利用者の生命や健康に重大な影響が出る業種は、「サービスの停止」「出入り禁止」をそのまま方針に書けない場合があります。指針は、業法の定めや、障害のある方への合理的配慮、消費者の権利に留意するよう求めています。自社の業種の法律の定めを確かめてください。一般の小売や飲食でも、障害のある方が配慮を求める申し出そのものはカスハラに当たらない、という点は同じです。介護、障害福祉、旅館・ホテルは別の記事にしました。病院や診療所で、医師の応招義務とどう分けるかはクリニック・病院のカスハラ対策、応招義務と診療を断れる場合の考え方にまとめました。コールセンターや電話窓口で、電話を切る基準と転送の順番はコールセンター向けの一式にあります。

対象と、対応しなかった場合

業種・業態を問わず、すべての事業主が対象です。企業間の取引が中心の会社も含みます。店頭だけでなく、電話、メール、SNSでの言動も含まれ、お客様の自宅や取引先の事務所など、従業員が仕事をする場所はすべて「職場」です。

企業マニュアルは、対応が不十分な場合は都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象となり得る、としています。自社のやり方で足りているか迷うときは、都道府県労働局に相談できます。

自社に足りないものを確かめる

13の質問にタップで答えると、そのうち9問で、5つの措置のどこが不足しているかが分かります。

自社の不足を確認する(無料・目安2分)

名前やメールアドレスの入力はいりません。回答の内容は、このブラウザの外に送信されません。

スタッフがスマホで読む研修(目安約10分)と、誰が受講したかの一覧は、デモで見られます。料金は料金ページ(月額4,980円・税込)にあります。